安倍晋三首相は17~20日の日程で米国を訪問し、トランプ大統領と会談する。
5月以降に予定される米朝首脳会談への対応とともに、米国の環太平洋連携協定(TPP)復帰や米英仏のシリア攻撃についても意見を交わす見通しだ。国内の不祥事に苦しむ首相は得意の外交で局面を転換したい考えだが、いずれの議題も一筋縄でいきそうになく、思惑通りに運ぶかは不透明だ。
首相は14日、大阪市の会合であいさつし、週明けからの訪米に触れ、「核・ミサイル問題について大統領としっかり話し、米朝首脳会談での基本的な方針を固めたい」と強調。「同時に初の米朝首脳会談の機会を生かして拉致問題が前進するよう全力を傾ける決意だ」と意欲を示した。
首相の最重要課題は、史上初の米朝首脳会談でトランプ氏に日本の立場を代弁してもらうことだ。日米間では、北朝鮮が核・ミサイル開発の完全放棄に向けた具体的行動を取るまで対価を与えないことを再確認し、日本独自の課題である拉致問題も提起するよう説得することが至上命令だ。
これに対し、ポンペオ次期米国務長官は米朝会談について「米国を核兵器のリスクにさらす活動から決別させることが目的」と説明している。トランプ氏は秋の中間選挙を控え、国内向けのアピールに傾斜。米国を射程に入れる大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発凍結だけで北朝鮮と折り合い、拉致問題や米本土に届かない中・短距離ミサイルの問題が置き去りにされる懸念は消えない。
首相訪米が迫る中、TPPが日米間の懸案に急浮上した。トランプ氏は13日、昨年離脱を決めたTPPへの復帰を検討するよう政権幹部に指示。ただし、「条件が大幅に良くなれば」との前提付きで、再交渉を求める姿勢だ。日本からの鉄鋼・アルミニウムの輸入を制限しつつ、2国間協定締結を迫る構えも見せている。日本政府は、トランプ氏が北朝鮮と絡めて取引を持ち掛けてくる可能性も想定しながら準備を進めている。
米国は首相の訪米直前に英仏両国とシリア攻撃に踏み切った。首相は米国の決意への支持を直接伝えるとみられる。ただ、首相は5月下旬にロシア訪問を控えている。シリアをめぐり米ロの対立が先鋭化する中、首相は難しいかじ取りを強いられる。
首脳会談の舞台はフロリダ州パームビーチにあるトランプ氏の別荘マールアラーゴ。2日間の会談に加え、2人でゴルフも楽しむ見通しだ。首相は腹を割って話し合い、成果を勝ち取りたい考えだが、「予測不能」(閣僚)なトランプ氏だけに先行きは見通せない。
最終更新:4/14(土) 19:43
時事通信